遼太郎はあたしが言った通り宏樹と同じ本を借りてきて、自分の席に座って読み始めた。


普段小説なんて読まない宏樹が本を広げている、その姿に笑ってしまいそうになった。


けれど、それが効果てきめんだった。


本を広げている遼太郎に今日を持ったのか、宏樹が自分から声をかけて来たのだ。


「それ、なにを読んで……るんですか?」


すでに薬の効果が出てきているのか、ぎこちない敬語になっている。


「これ? 小説」


遼太郎が笑顔でそう言った。


そんなこと言われなくても分かってるって。


もっとうまく会話ができないのかと、イライラしてくる。


「僕もその作品が好きで……えっと……」


「そっか。面白いよな」


遼太郎はチラチラとこちらを気にしながら受け答えをしている。