「その代わり」


遼太郎の声が一回りほど大きくなった。


あたしはビクリと体を震わせる。


「俺の彼女になってよ」


遼太郎の言葉にあたしは咄嗟には返事ができなかった。


遼太郎の彼女になるくらいなら、死んだ方がマシだ。


けれどここで断れば、遼太郎はあたしがやろうとしたことを暴露するだろう。


「どう? 俺、君のことは大切にするよ?」


そう言ってニヤニヤと笑顔を浮かべる遼太郎。


あたしは後ずさりをして、そのまま踵を返して走り出した。


遼太郎が後ろから呼ぶ声が聞こえてきても、止まらずに移動教室へとかけこんだのだった。