惚れ薬

初美が低く唸るような声でそう言った。


「なんで……? お金なら、まだある……」


あたしは震える声でそう言い、自分の財布を取り出した。


「バッカじゃないの? 人から貰った金じゃなくて、自分で稼いで来いよ」


初美が耳元でささやきかける。


全身が泡立つのを感じた。


「でも……」


「遼太郎はあたしの命令をなんでも聞くよ? 半分も飲ませたから効果は数か月は続く。どうする?」


さっきまで寒気がしていたのに、今度は全身から嫌な汗が噴き出して来た。


持っていた箸がカランッと音を立てて床に落下する。


「あ~あ、拾ってあげて?」


初美がそう言うと、遼太郎が屈みこんで箸を拾った。