惚れ薬

怒りでどうにかなってしまいそうだった。


再び握りしめられる拳。


しかしそれを振り上げる事はできなかった。


航にあれほど冷たい視線を向けられると思ったら、心が凍ってしまいそうだった。


「青花、少し落ち着こう」


真弥がそう言いあたしの手を握りしめて教室から出た。


廊下の窓を大きく開き、冷たい風を浴びる。


そんな事をしたってあたしの気持ちは治まらない。


ギリギリと割れるほどに奥歯を噛みしめた。


初美には田中君がいる。


それなのに航に飲ませたのは、あたしへの当てつけでしかないだろう。