彼氏なんて必要ない。


「じゃあ、またね」


家の前にタクシーが止まり、あたしは真弥にそう声をかけて車を下りた。


今日も大荷物になってしまった。


二階へ持って上がるのが面倒から、母親に頼もうか。


そう思いながら玄関をあけようとした時だった。


いくらドアノブを回してみても、ドアが開かない。


間違えて鍵をかけてしまったのかもしれない。


「ちょっと、鍵あけて!」


玄関の向こうへと向けて声をかける。


しかし、返事はなかった。