真弥の言葉にあたしは「はぁ?」と、首を傾げた。


好きな相手に効果のない惚れ薬なんてなんの意味もない。


「だってさ、今まで薬を使って来た相手ってみんな嫌いな相手だったじゃん」


そう言われてハッとした。


そう言われてみればそうだ。


嫌いまで行かなくても、接点がなかったり、好きじゃない相手ばかりを選んでいた。


「そんな……それじゃ航には絶対に効果出ないじゃん!」


あたしは思わず大きな声でそう言ってしまった。


ギリギリと奥歯を噛みしめる。


せっかくチャンスは2度もあったのに、すべて無意味だったということだ。


あたしは小瓶を握りしめて、教室の後ろへ向けて大股に歩き出した。


航に効果のない薬なんて、持っていても意味がない。


「こんなもの……!」


薬を握りしめた手を振り上げた、その時だった。


「いらないなら、あたしに頂戴」


初美があたしの手を握りしめて、そう言って来たのだ。