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生徒たちが1人も残っていないA組に入ると、他のクラスの香りが漂っていた。


みんなが持っている家庭の香りが、それぞれのクラスに染みついているみたいで、少しずつ違う。


「あのさ、実は俺ずっと愛のことが好きだったんだ」


中学から顔なじみの晴とは、下の名前で呼び合っている。


『ずっと好きだった』というのはきっと嘘だろうけれど、あたしは喜んでいるフリをした。


よくモテる晴も、あたしと同じように何度も告白を受けているようだ。


「本当に? あぁ、よかった」


そう言うと、晴は一気に表情を緩めた。


嬉しいと言うよりも、安堵した時の表情に近い。