「……わかった」


お父さんの言葉にあたしは驚いて顔を上げた。


お父さんはどこか疲れた表情を浮かべていて、口元はキュッと結ばれている。


「勉強もちゃんとするなら、いいだろう」


「も、もちろんだよ」


お父さんの言葉にあたしは、頷いた。


お母さんの方へ視線を向けると、何も言わずに出かける準備を再開している。


あたしにはなにも言わない2人だけれど、あたしがバイトをすることで救われると思っているのかもしれない。


手放しで喜べないのは、自分たちに責任を感じているせいなのかもしれない。


「ありがとう、お父さん」


あたしは何も気が付かないフリをして、そう言ったのだった。