10枚の1万円札。


それを眺めていると、まるで夢を見ているような感覚になった。


面接も親や学校からの許可もいらないバイト。


彼氏を喫茶店へ連れて行くだけでもらえたお金。


その魅力に一瞬引き込まれそうになり、あたしは大きくかぶりを振った。


「なに考えてんの!」


自分の頬を軽く叩き、1万円札を封筒へ戻したのだった。