ここに売った方がはるかにお金になるからだ。


あたしは蓮人の手を振りほどこうともがく。


その時、通路の奥から2人のスーツ姿の男が駆け寄って来てあたしの体を拘束した。


それは喫茶未来の地下にいた、あの男たちだった。


「やめて……」


声が震えて涙が滲んだ。


大声を出しても、ここはオープン前の雑貨店だ。


誰もいないことはわかっていた。


「大丈夫。お前が売り飛ばしてきた男だって、不幸になったヤツは1人もいないだろう?」


蓮人がやさし気な口調でそう言い、あたしの頬を撫でた。