あたしは軽い感じてそう言い、階段を上がりはじめた。


「本当だよ。あの人普通の人じゃないから」


優里は小声だけれど、ハッキリとそう言った。


普通の人じゃない。


そんなのわかってる。


「中学時代の友達は、あいつのせいで一家がバラバラになった」


優里の声には強い怒りが含まれている。


あたしも同じだ。


自分の家族を守りたくて、○×金融を怨んだ。


逃げ道のない選択を迫られて、だけど相手は優しくて、今こうしている。


「そんなの嘘だよ」


あたしは優里から視線をそらせてそう言った。


「本当のことだよ!」


「そうだとしても、あたしは大丈夫だから」