「え？」



朝、頭上でけたたましく鳴るスマホの音に目を覚ますと表示されていたのは雄大の名前だった。



「雄大？」



ディスプレイに触れようとする指が震えて、電話に出ることができないうちに、スマホの着信音は途切れていた。



「出れなかった……」



残念なような。
ほっとしたような。
複雑な心境だ。



「はは、やっぱダメだなー」



1度着信があったくらいで、あたしの心は揺らぐ。
でも、脳裏に浮かぶのはあの日の冷たい目をした雄大。

それで、うまくディスプレイに触れることができなかった。

雄大がなんのようだったのかきになった。
でも、かけ直すことはしなかった。

振り回されたくないから。
一度の着信だけで既に振り回されそうになってるけど。

いい加減、諦めなきゃってずっとおもってる。
いい加減、前を見ないといけない。
でも、このままじゃ前になんて進めない。



「起きよう……」



あたしは部屋のドアを開けて、廊下に出る。