「この黒い袋が赤ちゃんの入ってる袋で、この影みたいのが赤ちゃんだって」



春樹が指をさして教えてくれる。



「そっか……本当にいたんだね」



なんとなく、宿った実感もなかったし。
だから、いなくなって実感もなかった。

今こうして、エコー写真をみせてもらってはじめて実感ができている気がする。



「ここにきちんと存在していた事実。亜実が持っててよ」


「うん……」



ギュッとエコー写真を握る手に力を込める。



「ごめんな、大変な思いさせて」



春樹の言葉にふるふると首を横に振る。



「ねぇ、春樹。毎年今日に会おうか」


「今日?」


「うん、命日だから。この子の」



なるべく笑顔で。
エコー写真を春樹に掲げる。



「もう、会ってくれないかと思った」


「そんなわけないでしょ。春樹はいままでもこれからもあたしの大切な人だよ」


「そっか……。亜実との間になにもなくなるわけじゃない。俺たちには兄妹っていうかけがえのない繋がりがあるんだもんな」



春樹がどこか吹っ切れたような顔になる。



「宿ってくれてありがとう」


エコー写真にそっとキスをする。


本当の姿に会えるのはいつになるかはわからない。
あたしはその日まで、君に恥じない人生を送ることを誓いたい。

その日を目指して、未来へと1歩を進む。