ずるいとは思った。
こう言えば雄大は何も言えないってわかっていたから。



「……ごめんね。春樹行こう」



春樹の手を握りしめて歩き出す。



「俺は諦めねぇからな!」



背後から聞こえる雄大の声には振り向かなかった。

振り向きたい。
振り向いて抱きつきたい。
そんな気持ちに駆られながら。

でも、できればずっとずっと想い続けて欲しい。
そんなワガママなあたしを許して。



「いいの?」


「……っ、春樹待って」



雄大が気になったとかじゃない。

冷たいなにかが足を伝う感触に歩き出せなくなってその場に止まってしまう。



「どした?」



立ち止まるあたしを不思議そうに見る。



「足、が……」



怖くてそれ以上の言葉はでなかった。



「足?……血!?」



あたしの言葉に足元に目線を移した春樹が驚きの声をあげる。



「……っ」



春樹の言葉に恐る恐る自分の足元をみる。