「ちょっと会議だから、2人とも暗くねらないうちにかえるのよ!」



さーたんが机から資料をとって、パタパタと走っていく。



「……っ」



残されたあたしと雄大は二人きり。
お互い言葉を発することなく、黙々とマネキンに向かっている。



「がん、ばってたんだね」



沈黙を先に破ったのはあたし。
沈黙に耐えられなかった。

となりから感じる、雄大の空気、息。
全てに過剰反応してしまうから。


「うん。最初は不純な動機だったけど、気づいたら楽しくなってた」



そう言う雄大は本当に楽しそう。



「不純?」


「亜実に会えるから」



真剣な眼差しであたしを見る。



「じょ、冗談やめてよ」



自分の顔が赤くなっていくのがわかる。



「絶対赤くなると思ったよ」



何もかも見透かしたようなこの目。
この目に何度、吸い込まれそうになったのだろう。



「……もう、からかわないで」