「母さん、諒子ちょっといいか?」



お父さんの声に、キッチンで洗い物をしていたお母さんとソファーで本を読んでいたお姉ちゃんが食卓にやってくる。



「母さん」


「わかってる。本当はもっと早く話すべきだったってことも」



お父さんの言葉に静かに頷くお母さん。



「なになに、どーしたの?」



突然呼ばれたお姉ちゃんがキョトンとした顔をしている。



「とりあえず座りなさい」



お父さんが椅子を引いて座るので、お母さんがその隣、お母さんの向かいにあたしでその隣にお姉ちゃんがすわる。

小さいころから変わらないいつもの構図だ。



「話は父さん母さんが大学生の頃に遡るんだが……」



こほんと咳払いをして話を始める。



「これまた随分昔の話だね」



何も知らないお姉ちゃんは首を傾げる。

春樹と別れなくちゃならない理由を聞いているのに、あたしだってこんな古い話をなぜいまされているのか不思議で仕方ない。