『参ったな……』



電話越しの春樹は深くため息をつく。



「春樹……」



教えて欲しい。
なにがあったのか。



『俺からは言うことができない』


「え……?じゃあ、誰が……?」


『亜実のご両親に聞いてご覧』


「え……?」



予想外の言葉だった。

たしかに、お父さんには反対をされたいけど。
でも、その理由は春樹も分からなかったはずだ。

今日、お父さんが春樹を追いかけたけど、その時になにか話した?



『きちんと聞いて、亜実に判断してほしい。俺の気持ちは変わらないから』



「うん……」



春樹の気持ちが変わったわけではなかった。
でも、その理由がわからなくて、胸のモヤモヤがとれないままだった。



「聞かなくちゃだめ?」



なんとなく、聞くのが怖かった。
なんでかはわからないけど。



『うん。俺だけ知ってて、付き合うわけにはいかないから。きちんと亜実にも知って欲しいんだ』


「わかった……」



聞かなきゃなにも始まらないってことだ。
あたしは固く決意をして、椅子から立ち上がった。