食べ物は美味しいと思う。
でも、身体には残らないんだ。

でも、不思議なんだけどチョコレートだけは食べても吐かないでいられる。



「なんでチョコレートにしたの?」


「ん?嫌だった?」


「違う、違う。みんなゼリーとか持ってくることが多いから飽きちゃってありがたいよ」


「そういうことか。春樹に薦められたんだ」


「そっか……」



やっぱ春樹か。
あたしが香莉菜と昌也の前でちゃんと食べられるように、チョコレートにするよう言ってくれたんだね。

どうして、こんな自分のことをいつまでも思い出さないあたしに愛想を尽かさないでいてくれるんだろう。

もう、離れて行かれてもおかしくないのに。



「春樹のことはまだ……?」


「……うん」



香莉菜の言葉にこくんと首を縦にふる。



「なんで、兄ちゃんだけなんだろうな」


「気を失うときに一緒にいたから?」


「そんなの俺らだっていただろ」



ふたりがあたしが倒れたときのことを話してるけど、あたしにとっては自分の出来事とは到底思えない。