「あ、春樹くん!」



ガチャっとドアが開いて、お母さんがそう口を開く。



「目、覚めたんだな!」


嬉しそうに笑いながら、ベッドに駆け寄ってくる。



「……え」



あたしはこの人がわからなかった。
あったことのない人だった。



「……お母さん」



お母さんの服の裾を引っ張る。



「ん?」


「誰……?」


「誰ってなにが?」



お母さんがきょとんとした顔になる。



「この人……知らない」


「何……言ってるんだ?」



春樹と呼ばれたその人が怪訝な顔になる。



「会ったこともない人がなんでここにいるの?」


「おい、なんの冗談だよ」



苦笑いをしながら、あたしの頭を撫でる。



「触らないで!」



知らない人に触られた嫌悪感から、その人の手を振り払う。



「……亜実」


「……っ」



知らない人とは言え、最悪な態度を取っていることに罪悪感を感じたけど、でも取り消せない。

あたしにとっては初対面の人。