「浮気って気持ちが浮つくことだろ。俺は、亜実しか見てない」


「だからって……」



何をしてもいいということにはならない。
でも、気待ちは雄大にあるあたしのほうが、その原理でいくと浮気しているような気がしてしまう。



「俺はずるいんだ」


「……え?」


「亜実を手放したくないから……言えないでいる」



なにを……?
そう聞きたかった。
でも、聞けなかった。



「痛っ」



頭が割れるように痛くて、その場にうずくまる。



「亜実!?」



遠のく意識のなか、春樹のあたしを呼ぶ声が聞こえる。

この声に守られたかった。

……春樹。
春樹に守られたかった。
そして、幸せになる未来を見たかった。

でも、雄大のことが好き。
手放す意識のなか、あたしの脳裏に浮かんだのは雄大の顔だった。



『俺のこと好きだって言ってくれねぇ?』



昼間に聞いたこの言葉が、そのときの雄大の顔が頭から離れなかった。


どうして、あたしの頭の中はいつもいつも雄大がいるのだろう。

こんなにも、春樹を必要としているはずなのに。
雄大がこびりついて離れないんだろう。

嘘でもいいから、好きだと言えばよかった。
嘘じゃないけど。
雄大に嘘と思われてもいいから、言ってしまいたかった。