蝉の鳴き声が初夏を告げ始めた頃、僕は、窓の外を無心で眺めていた。淡々と季節が移りゆくのをずっと...
この部屋で見ていたんだ。

「桜木さ~ん、いつものチェックだけしますね!」
明るく振る舞う看護師の声が、逆に耳障りだ。
「点滴OK。脈拍、血圧異常なし!...じゃあ、体温だけ測っておいて下さいね!5分後、また来ますから」

僕、桜木遥真(さくらぎ はるま)は、全身の筋肉や靭帯などが徐々に硬くなって、骨に変わる〔進行性骨化性線維異形成症〕という珍しい難病なのだ。
この病気は、先天性の病気だ。
僕は16歳、高校1年生。同じ年代の子なら、学校へ行き、友達と遊び、恋をして、将来のことについて考えるであろう。