校舎を出るとすでに人はまばら。まだ雪の影響で校庭は水浸し。
 排水にぽたぽたと落ちる水の音が耳に心地いい。今はこの沈黙が怖いから。


 一度止まった光哉が思い出したかのように、話しかけてきた。



「今日は待たせてすまなかった」

「いいの。話、長引いたんでしょ?」

「……ああ」



 軽く会話を交わして、それ以上のことを話さないまま歩き続ける。すぐにいつもの距離が開いた。


 ゆっくり歩いてくれているのは、合わせてくれているのだと思うと嬉しい。でも心から喜べない。


 すれ違うばかり。
 今は二メートルほどの距離だが、明日には倍になっているかもしれない。


 卒業してしまえば、もう姿さえ見えなくなってしまう。あと一年しかないのに。