分かり合えないんじゃなくて、きっとお互いがお互いを知ろうとしないだけ。
私は迷っているんだ。
利生君にどこまで踏み込んでいいのか。
好きなタイプ、好きな映画、好きなテレビ番組。
学生らしい友達がするような会話なんて、一つもしたことがない。
そもそも私なんて利生君にとっては、王の暇潰しのために用意された“道具“のようなものでしかないのに。
「またそういう顔するんだ」
ボソっと呟いた利生君の言葉に嫌でも反応してしまう私は、言葉を吐いた口からではなく、色を無くした瞳にそう問われている様な気がして、何も言い返せない口と一緒に目線を逸らしてしまう。
「どうして羽子は、俺になんでも話てくれないんだろうね」
「……」
「羽子の脳の奥の奥まで俺でいっぱいになれば、こんな風に俺が傷ついたりなんかしないのに」
「利生君が傷……つく?」
何言ってるのこの人……。
とても傷ついてる様には見えないよ。
だってさっきから、ずっと。
歪んだ笑顔で私を見てるじゃない。


