りせい君の理性が危うい瞬間






ガッチリと掴まれた手首。


そしてそのまま、ベッドに押し倒される。


ドキ……ドックン、ドキッ、ドックン。


心臓の音が変わる。


音色だ。


奏でてる。


利生君が私の中にある音を操って、かき乱して、ぐちゃぐちゃにしてる。


ねえ、嘘だ。


私が利生君を操ってる……?


私の中の、恐怖や絶望、妙に苦しくなったり、時には甘くなったり。


そんなの全部、利生君が隣いて、騒ぎ立て始める感情なんだよ?


利生君が私を操ってるんだ。


じゃなきゃ、こんなに……利生君を見て苦しくなったりなんかしない。




「羽子、なにしよっか」


「……なにも、しないよ……」


「したいよ、俺は。
 キスしたり、噛んだり、抱きたい時だってあるよ」


「ーーッ!?」


「無理矢理でもいい。
 欲しい、ぜんぶ。
 無理矢理抱いてしまえば、俺のものにできるかもしれない」


「……」


「でもそうしないのは、羽子に嫌われることを怖がってる自分がいるからなのかな……?
 ……いや、そんなものは関係ない。
 気持ちが通じあって、抱き合うそれは、幸福だと言うね」


「……」


「俺はそれを感じてみたいだけだよ。
 それって羽子に気持ちがないと意味がないってことでしょ」


「りせいくっ……」



「ーーあぁ、好きだよ、羽子。
 好きなのに、全然伝わらない」