りせい君の理性が危うい瞬間






「俺のこと見かけたら、気軽に話しかけてきてね」


「うん……庄一郎も……」


庄一郎は「いっけね!友達待たせてるんだった!!じゃあね」とボールを持って走り去っていく。


庄一郎が足をつけたときに舞う草。

足跡は残っていないのに、彼の踏んだところが分かるのは

多分ジッと、いなくなるまで庄一郎の後ろ姿を見ていたからなのかな。


気になる。


お世辞でもイイとは言えない私の初対面の印象。


それを気にしないでいてくれる庄一郎の優しさ。



「あっ」


心にキュンときた熱が、いてもたってもいられなくて、意味もなく声に出る。



普通の人。


普通に優しくて

普通のやりとり。


人間らしさ。



久しぶりの体験に、胸が痛いくらい熱くなり。



庄一郎ともっと話したかったという欲が生まれる。




次もし会えたら……話しかけよ。



不思議な甘酸っぱさを胸に、私は教室に戻った。