「あっ、えっと……」
そこまで緊張することないのに。
思わず、一歩下がって彼との距離をとる。
利生君とはまた違った顔の整い方をしている彼は、コンビニに並ぶ雑誌の表紙とかでよく見かけるアイドルっぽい可愛さがあった。
「すみません、それじゃあ」
なんて言えばいいか分からない。
最近はずっと利生君としか話してなかったから。
人との距離の縮め方が分からない。
人見知り全開で、彼に後味の悪い印象を残したままこの場から立ち去ろうとすると。
「待って」
ザァッと、その辺に生えている木と雑草が風で揺らいで、雰囲気を変えた。
「名前と学年教えてもらっていいかな?」
引き留められて、突然なにを言い出すかと思うと。
たったそれだけ。
たったそれだけのことで私を引き留めるなんて……。
意味が分からないよ。
だって別に、転がってきたバスケットボール拾っただけだし。


