りせい君の理性が危うい瞬間






グイッと軽く、私の短い髪を引っ張って、顔を上に向かせる。


視界に映るのは、教室のちょっと汚れた灰色の天井(てんじょう)でも、教室に入り込んだ夕日のオレンジ色した光でもない。



ーー利生君の、私を見下した顔だ。




「何回もキスした仲なのに、その唇は全然俺の事好きになってくれないね」


「……っ!」


「まあ、それはそれでいいよ?
 嫌われても好かれても、どっちでも。
 俺が羽子のこと好きなことには変わりないから」



スルッと私の首に、指を走らせる利生君は
ピタリとその綺麗で長い指を私の口元で止める。


ツンツンと何度も下唇を押される度、反応してしまう。


目の前に、視界いっぱいの利生君は毒だ。



全然……身体が言うことを聞いてくれない。


『触らないで』


その一言も言えなくなってしまうほど……。


身体は利生君でいっぱいになっている。