親が自殺したからって、その背中を追う勇気すら出ない私は
死にたいなんて思えないけど。
闇に溺れて息絶えることが出来るなら
そのまま沈んで...一生起こさないでほしい。
気づけばいつの間にか利生君に八つ当たりをしていた。
ポロポロ涙を流す私を見て、口角を上げたままジィー...っと見つめる利生君は、どこまでも正気じゃない。
普通ここは、慰める場面でしょ。
「なんでも持ってる?
ああ、俺は完璧だもん。何もかも持ってないといけないんだ。
完璧に作られた人間は、完璧じゃないと神様に殺されちゃうからね」
「...」
「でもね、俺にも"持ってないもの"を、あんたは持ってる」
言いながら、私の目の前に立って
コンクリートに落ちて沈んでいく涙を、その綺麗な指で私の頬から掬い上げた。
きらきら、きらきら。夏の花火みたいに、綺麗には弾けない私の涙を
利生君は見つめ、切なそうに眉を下げる。
利生君の目は枯れていた。
輝いてる雫を、その真っ暗な瞳で映し始める利生君の目は、やっぱりどこまでも感情がこもっていない。
「物心ついた時から、泣くことが出来ないんだ俺」
「...うそっ、」
「じゃないよ、ほんとだよ?
だからあんたの気持ちなんか知らないし、泣いてる理由なんか教えてもらっても、きっと同情できない」
「...」
「だけど」


