りせい君の理性が危うい瞬間





「俺は羽子にひどいこと言われても、好きでいる自信あるよ?」



後ろから伸びてきた綺麗な手が、机に置かれて。
すぐ後ろにいる利生君が少しだけ屈んで、私の耳元で囁くように喋り出す。




「もっともっと壊れてよ、羽子。
壊れてくれないと、羽子 俺に懐いてくれなさそうだし」


「そんなひどいこと言う人、誰だって嫌いだよ...っ」


「んじゃあ嫌いでいいよ、うん。てか一生嫌いでいてよ。
好きより嫌いの方が心を支配するからね。
つまり今の羽子の心は俺で満たされてるってことだよね?あー、なんかそれもはや愛だよね〜?」



嫌いという感情を愛と呼べるのは、この世で利生君だけだと思う。



「羽子はどうせ、俺に逆らえないんだし。 さっさと俺に溺れなよ?その方が楽だよ」



「利生君に溺れるくらいなら、死んだ方がマシーーだから...」



“さっさと部屋から出ていって“と言おうとしたとき。


利生君が、私の首元を噛んだ。


ズキッと走る痛み。



声にならなくて、思わず利生君を突き飛ばした。