普通のヒーローなら、救いの手を差し伸べただろう。
でも利生君は普通じゃなければ、ヒーローでもない。
彼はどちらかというと悪役側なのだ。
さすがの安藤さんも、予想外の利生君の反応に、驚きすぎて言葉を失っていた。
望みなんか利生君が息を吹きかければ簡単に消える。
こんなの。 安藤さんにもっと私をいじめろって言ってるようなもんじゃないか。
「それしゃあ羽子、また放課後迎えに来るから。
“素敵な“学校生活、友達と仲良くね?」
ヒラヒラと、借りた教科書を横に振って、何事も無かったかのように教室から出ていく利生君。
「...あんた、利生君の彼女じゃなかったわけ?」
そう不思議そうに聞いてくる安藤さんに、私は黙って首を横に振ることしか出来なかった。


