視界を歪ませる涙が落ちないようにと、下唇を噛んで堪えた。
安藤さん、今絶対勝ち誇った顔で私の事見てるよ。
それが分かっていたから、俯いたまま、利生君の制服を後ろから引っ張った。
「私の教科書汚したの、安藤さんなのに。そんな人の教科書を借りちゃうの...?」
簡単にバラしてしまう私は嫌なやつ。 だけど、嫉妬して私に意地悪する安藤さんの方がもっともっと嫌なやつだ。
だから利生君...そんな女に騙されちゃいけないんだよ?
「ちょっ!あんたの教科書に落書きしたの、私だって証拠あんのかよ!!」
自分の醜い姿を利生君にバラされて、わかりやすく焦り始める安藤さんは、机に横腹をぶつけみ、痛みで一瞬顔を歪めた。
こんなことするの、安藤さんしかいないじゃん。
証拠はその心の奥底に隠されている。
だけど。
「安藤さんが羽子の教科書に落書きしたから...それが、どうかしたの?」
私よりも、安藤さんよりも。ずっとずっと性格の悪い人がそう呟く。


