りせい君の理性が危うい瞬間






こんな私を見て、利生君は何を思うんだろう。



隠そうと必死になって、でも助けてほしくて。
慌てながら鞄に押し込む教科書が上手く入らない。



そんな私を見て、利生君は見下しながらこう言った。



「確かに羽子の教科書汚いね。...それじゃあお言葉に甘えて、えっと?」


「安藤美苗です」


「そう。じゃあ安藤さんから借りるから、羽子はもういいよ」


「ーーえ?」



利生君が私の目の前で安藤さんから教科書を受け取る。



利生君の綺麗な手に私物を触られていると思うと、安藤さんは今にも嬉しさで叫んでしまいそうな口元を、手で隠していた。




「...利生君は、私のじゃなくても。いいんだ」



ポソッと呟いた。
これが嫉妬かどうかなんて、わからない。



でも...そんな簡単に、私以外の人の物を借りるなんて。なんだかすっごく...やだよ。