りせい君の理性が危うい瞬間





次の日



不満はあっても口には出せなくて。

もう利生君とは一緒に居たくない。



母親を助けるために利生君に買われた。それって自分から望んで彼のペットになったはずなのに、全然幸せじゃないのはなぜ?



「羽子、ちょっと」




1限目が終わり、ちょっとした休み時間。



教室のドアにもたれかかりながら、私の名を呼んで手招きする利生君は、悔しいけどやっぱりカッコイイ。



クラスは別だけど、彼が私の教室に頻繁(ひんぱん)に来ることが多くなった。




「どうしたの、利生君」




教室に居る女子達の刺すような視線が怖いけど、それよりも利生君には逆らえないのが現実。




「羽子から国語の教科書借りようと思って」


「えっ、利生君忘れたの?」


「ううん。羽子の教科書が使いたいだけ」