りせい君の理性が危うい瞬間




手の届かない存在に、触れてみたくなるのは、きっと物珍しさからくる感情からなんだろうけど。



私と利生君の距離はあまりにも遠すぎる。




こんなに近くにいるのに。利生君が私につけた見えない首輪のせいで、やっぱり私達はこの関係が続く限り...

ご主人様とペット。のままなんだ。




利生君が私をお姫様抱っこしたまま、器用に屋敷のドアを開けると。


ちょうどドアノブに手を伸ばしていた男の人が、勝手に開いたドアに驚いた顔を見せた。




「久しぶりだな...凛星(りせ)」



高そうなスーツで身を包んでいる男の人がそう言うと。
利生君は目を逸らし、反応もしないで私の部屋に足を進めていく。




ーーが。




「なんだその女は。お前の新しいオモチャか? どうせすぐ飽きるんだ。変な“もの“を家に持ち込むな」




私を見ながら、男はそう言った。

ドクッと、心臓から鳴ってるはずの音が喉に振動を与えるから。



怖くなって利生君の胸に顔を埋めた。