りせい君の理性が危うい瞬間




やられた。

これも私を油断させるための罠だったのかもしれない。

それがなんだか悔しくて、下から覗くように涙目で彼を見ると。

「いろんな女と遊んできたけど。やっぱり羽子が1番可愛いね」

クスッとバカにしたような笑い声が、チカチカと光る星みたいに上から降ってきた。


「タラシ、性悪、嫌い。...可愛いなんて思ってないくせに」

「思ってるよ。こんな可愛い子お嫁さんに出来たら幸せだろうなあ。くらいに、ね?」

「利生君気持ち悪い」

「ハハッ、初めて言われた。でも羽子だから許してあげる」


ダメだ、ダメだ。

こんな風に普通に話せることが、少しでも嬉しいなんて。浮かれちゃダメなんだ。

利生君とは生きてる価値観も世界もすべてが違うんだ。

そんな人に心を許しちゃ...いつか痛い目見ちゃうから。


だけど。 それでも利生君が笑うと嬉しくなっちゃうのは、なんでだろう?