「っ...!」
声にならない声が、刹那を刺激する。
フワッと浮き始めた彼の姿を見て、頭の中が真っ白になった。
私が利生君の胸板を押したせいで、利生君が廃墟ビルの屋上から放り出されてしまったんだ。
"人殺し"の文字が頭の中を支配する。
違う...だって、わたし...っ
どうしよう
どうしよう
どうしよう...っ!!
お父さんが亡くなってから、恨むように毎日来ているここで
利生君と他人のまま数日を過ごして。
彼が私に話しかけてきても、絶対に口を開かなかった。
そんな...私たちの関係に名前すらないまま
呆気なく終わってしまった、利生君との数日は。
無音と共に消えていく。
そう思っていた。


