従っても、従わなくても。関係ない。
彼は思うがままに生きて、思うがままに私の心の中を支配しようとしている。
完全に支配されたその時こそ。
私のすべては利生君のモノになり、もう後戻りする選択肢なんか選べないくらいに...純情もなにもかも奪われてるに違いない。
だから...完全に利生君に心を許しちゃダメだよ、私。
ーーでも。
「抱っこさせてくれるなら、ご褒美あげてもいいよ」
「...ご褒美?」
「そう。例えば...」
ツゥー...と、彼の綺麗な長い指が、私のお腹周りをなぞる。
その微かな刺激に反応して、ピクっと顔に熱を宿せば。
「嫌いな俺に、そんな無防備な姿見せて楽しい?」
妖しく、甘く、そして挑発的に口角を上げて笑う利生君は、咲き始めの花よりも何よりも綺麗だった。
利生君の綺麗な顔に、見惚れてしまって声が出ない。
そのせいで。
「スキあり」なんて言いながら、利生君は私を軽々とお姫様抱っこし、お屋敷の中へと足を進める。


