「ねえ聞いてんの?
耳あるよな?あんた幽霊じゃないんだし。
あっ、もしかしてその口と耳は飾りかな」
8階建ての廃墟(はいきょ)ビルの屋上で
今にも壊れてしまいそうなフェンスにもたれかかってる利生君は命知らずだ。
利生君が無視する私に一歩一歩近づき
ーーーそして。
カプっと後ろから、私の耳を躊躇(ちゅうちょ)なく噛んだ。
「なっ...!?なにするの!!」
「あっ、喋った。
やっぱ人間じゃん、うける」
今度は舌を出してペロリと耳を舐める利生君。
イタズラにしては過激なその行動に
私はムカついて利生君の胸板をーーードンッと押した。
そのせいで、グラついた利生君の体が錆びたフェンスをぶち破り
そのままコンクリートについていた足を踏み外す。


