「ねえ、あんたさ。
この屋上で毎日毎日どんな景色を見てるの?
もしかして自殺しようとか考えてんの?」
っと、後ろから聞こえてくる低い声は、なんだか楽しそうに私のことを観察していた。
父が自殺してから、恨むように毎日来ているこの場所で出会った男は
暇さえあれば私の悲しみを笑いに、ここにやってくる。
何も聞こえてこないイヤホンを耳に付けて、本当は聞こえてる男の声に聞こえない振りをする。
この男に関わったら面倒だと。
私はこの男のことを高校入学の時から知っていた。
ーーー利生凛星(りせい・りせ)くん。
親が大手企業の社長で、彼はその息子。
私の学校には絶対に逆らってはいけない"王"がいる。
めちゃくちゃ大金持ちで
噂では学校に大量に寄付をしているとかなんとか。
顔が良すぎて、学校のパンフレットのモデルになったり。
成績優秀、付け加えて運動も出来る。
その王の正体はもちろん利生君。
すべてが完璧な利生君だけど、それを盾に先生に歯向かったりしたことは1度もない。
だから先生からの信頼も厚い。
でも、なんとなく分かる。
この人は危ない人だって、直感で分かるんだ。
そんな危ない存在の利生君と、精神的に追い詰められてる時に出会ってしまったんだ。
最悪...以外の何ものでもないよ、ほんと。


