1枚だけ利生君の手に残ってた1万円札を、利生君は私の唇に当て
ーーーそして。
お札越しに私にキスをしてきた。
不思議な感触。
柔らかいのに、1枚の紙で柔らかさが半減され
それはそれでアリかもしれない興奮に襲われた。
だけど、すぐにハッと我に返って、利生君からすぐに離れた。
「信じらんない...最低...っ」
「あっ、もしかしてファーストキスだった?
レモン味じゃなくてごめんね。
今度する時は、レモンでも食べてくるからさ。ね?」
冗談にしては、笑えない。
罪悪感なんて、彼の心の中には1番存在することがない感情なのかもしれない。
嫌い
大っ嫌い。
この人の何もかもが嫌い。
こんなに性格が悪い人...初めて見た。


