今もふと、空を見上げて考える。いつも変わらず朝はやってきて、そして夜がやってくる。人はそんな一瞬の積み重ねの繰り返しなのだろう。これは空を見上げ始める前の話…

今年から始まる高校生活。
どんなことが待っているのだろうか、と期待と不安で胸がいっぱいの中、新学期新クラスでは定番である前後の人と仲良くなろう大会がクラスでは始まっていた。
僕は人と話すのが苦手だし、自分からは話しかけれないわけで、前の席が同性の男子だっただけで一安心しているぐらいしかできなかった。中学では周りの人と仲良くなるのに1.2ヶ月もかかったのをまだ覚えていた。
そんなことを考えている間に始業のベルが鳴る。
はぁ、これは友達できそうにないな…そう思いながら担任の香川めぐ先生の話を聞き流していた。
トントンッ
ん?何か今肩を叩かれたような…まぁ間違いか。そう思って何もなかったかのようにまた前を見て考え事をする。
トントンッ
またか、これはただの間違いじゃないな。そう思い後ろを振り返ってみる。後ろも男子だ。そして何があるかわからないのですかさず応答する。
「どうしたの?」
第一声がこれでよかったのかな、と考えていると
「名前!しらさきっていうの?それともしらざき?」
と後ろの肩トン野郎は言ってきた。この質問は[崎]という漢字が入る苗字の人ならわかると思うが、聞かれると僕は少しめんどくさいと思う。正直呼びたい方で呼んでくれ、と。でも一応正しい読み方があるので教えておこうか。
「あ、名前の呼び方?しらさきだよ!えーっと、そっちは?」
この時僕は自然に話せて名前が聞ける、とちょっと安堵していた。
「俺の名前?あぁ、俺はたなべ!田辺辰都(たつと)!呼ぶ時は辰都でいいよ!」
こんなにすんなり会話が始まったのは初めてだ…と感動していると、
「しらさき、だっけ?下の名前ってなんて言うの?」
これは予想外。まさか下の名前も聞かれるなんて…でも向こうが教えてくれたから教えないとだめだよね。教えよう。
「僕は白崎史武(ふみたけ)!皆には[ふみ]って呼ばれてるかな?」
「じゃあこれからふみって呼ぶからちゃんと反応してくれよ!」
「わかったよ、これからは気をつける!」
ご近所の名前交換をしてると先生の話は終わりかけていてもう終礼の準備をし始めていた。よし、話せる人が出来た。と思いつつ僕も帰る準備をし始めた。
(起立、礼、さよならー)
皆部活などでバラバラに帰る中僕は部活に入るつもりはなかったので帰ろうとしていた。この時から僕は、いや僕たちはそうなる運命だったのかもしれない。この日の放課後、そう、この日がきっかけで僕の人生は大きく変わったのかもしれない。