* KING+1 *

「杏果さっきから暗いよね。どうした?今から行こうとしている場所は 俺と一緒は嫌?」


頭をブンブンと振って 嫌じゃないアピールをする。


「ごめんなさい。大秦さんと一緒は全然嫌じゃないです。ちょっと考え事をしていました。今から何処に向かっているんですか?」


「フフ。やっと意識がこっちに来た子には 内緒だよ。さぁ急いで行くからね。」


然り気無く繋がれた手は 温かく大きい。手慣れた行動と素敵な会話が出来る大人の人。私 今デートしているんだった。


大秦さんが連れ出してくれた 本来なら癒しとなる場所の セーヌ川ディナークルーズ。


パリの夜景をクルージングしながら ライトアップされた観光名所が見れるオマケ付き。スゴく素敵でありロマンチックな時が過ごせる。


だけどやっぱり───隣にいる近い距離の男の人が先輩じゃないってだけで 心の温度は急速に冷えていく。


ここでも 偽物の笑顔を作り込み 離れても尚 先輩の存在だけが やたらクローズアップされる結果だけが よくわかった時間なのであった。