ひたすら地味に。平穏に。



誰にも私の素顔を見せてはいけない。



自分自身に言い聞かせ、身仕度を整える。



靴を履き、玄関扉に手をかけると、




「いってらっしゃいませ。凜様。」




そんな声がまもなく聞こえてきた。




そう、私、葉山凜は財閥の一人娘。つまりお嬢様なのだ。



高校1年生の私は父親の仕事の関係で2学期からこちら住み始めた。



今日は始業式であると同時に私の転校初日なのだ。