『俺は迷惑だとか思ってねぇから』


でも。


「須藤琴羽は思ってるんじゃないの」


彼女なんじゃないの?


『琴羽?』


渚の声がワントーン下がった。


「彼女なんでしょ?」


何聞いてんだか。


『違う。彼女じゃない。俺は─』


「抱きしめてたの見たもん……」


渚としゃべってると、余計に胸が苦しくなってきた。


泣きそうになる自分もいる。


『……琴羽が泣くから』


女が泣いてたら抱きしめるものなのかな…。


でも、私が泣いてたって抱きしめないじゃん。


「やっぱり須藤琴羽は特別なんだよ。渚にとって」


じゃなかったら抱きしめない。


『違うから。琴羽が泣いてたからだっつってんだろ』