日曜の夜。

広海君とは、仮眠室の最後の夜。

「次いいわよ、ミライ～」

シャワー室から出てきたパジャマ姿の広海君が、ミライに声を掛ける。

「は～い」

着替えを手に立ちあがって僕の布団の前を横切っていくミライ。

入れ替わりに、広海君が髪を拭きながら入って来て前を横切っていった。

（ここを逃したら、もうまともに話す機会は無いかもしれない）

行くなら今だ。

「ちょっと待てよ広海君、話をしないか」

手をパッと掴んで引き止める。

「話を？」

振り向いて小首を傾げる広海君。

眉をしかめてはいない。

大丈夫だ。

「最近、話らしい話をしてないだろ」

「…そうね」

広海君は僕に構わず、そのまま奥の自分の布団の端に座り込んで、壁際に置いてあったバッグを引き寄せた。

僕も傍に座り込む。

広海君はこっちも見ずにバッグに手を突っ込んでる。

「で、何を話したいの？」

横を向いたまま、バッグから取り出した化粧水を手に取って、パタパタと頬を叩き始める広海君。

全く気の無い素振りじゃないか。

少しはこっちを向いてくれよ。

「今さら話を蒸し返すつもりはないけど、君にはどうしてもわかってもらいたいんだよ」

僕の気持ちを！

「そうね。私も蒸し返すつもりはないわ。もう終わったコトだし」

えっ！？

（そんな、終わったコトなんて）

そんな事言うなよ！

とっさに両肩を掴んで、グイッと僕に向き直らせた。

「終わってなんかない。僕の気持ちは少しも変わらないんだ。わかってくれ」

全然終わってないんだよ僕の気持ちは。

「…わかってるわ」

一瞬の微笑み。

そしてフッと横を向く広海君。