次の日。

大学から帰ってくると、研究所の周りは中継車やら何やらで大騒ぎになっていた。

人だかりの中には外国人記者の顔も見える。

(こりゃ大変だゾ…)

このままではマスコミをにぎわす時の人になってしまうのは確実だ。

(マッタク嫌になるよ)

ヤジ馬の学生が集まっただけでもウンザリしたっていうのに。

(会見、中止にならないだろうか…)

その日は久しぶりに正面エントランスから中へ入った。

吹き抜けのホールには、ズラリと並んだパイプ椅子の列の先頭に長テーブルが置かれて、背景に大きな白い布が掛けられていた。

壁際では照明やカメラのセッティングが進められていて、会見場らしい雰囲気が着々と整いつつある。

「…後戻りは出来ない、か」

ウンザリするよ。

研究室へ向かう足取りも重くなるって。

「ただいまぁ~」

研究室の中では所長と研究員たちが何やら輪を作って並んで立っていた。

研究員の肩越しに、輪の中でこっちを見て微笑むミライの顔だけが見える。

「おかえりなさい!」

声を上げるミライ。

もう一度ただいまと返事をして歩み寄る。

と、研究員たちが真っ直ぐ立ったまま、顔だけを一斉にこっちに向けた。

「な、何やってるんですか?」

何かを隠しているような、異様な光景ですけど?

「見てごらんよ、ほら」

スッと脇へ避ける所長。

とみんなの輪が解けた中に、パールホワイトのロングドレスを着たミライの姿があった。