「ほら、あんな事があってあなたが落ち込んでるんじゃないかって。主人も気に掛けていたわ」

「所長が?」

驚いた。

所長が僕の事まで心配してくれてたなんて。

「ほら、あなたが落ち込むとミライさんまで落ち込んじゃうでしょ。今度の事を気にし過ぎて、大切な笑顔まで失ったりしないようにって」

なんだ、結局はミライなんですか…。

「男の人でも笑顔は大事よ。笑顔はココロの一番の栄養剤なんだから」

と奥さんが微笑んで後ろを振り返った。

「ほーら愛、舞、おじちゃんにもふたりでご挨拶してあげて。きっと喜んでくれるわよ~」

奥さんの呼び掛けに、二人がダダーッと駆け寄ってきた。

「おじちゃんこんにちはー」

うん、確かに笑顔は心のビタミンかもしれない。

「こんにちは」

自然と笑顔になってる。

「良かったら、しばらくここにいてもいいかしら?」

「ええ、どうぞどうぞ」

その日は一日、実験室に幾つもの笑顔が溢れていた。