十一月に入って最初の日曜日。

大学は賑やかに学園祭を迎えた。

「なんだかワクワクするわね~、お祭りってだけで!」

実験室の窓から外を眺めながら声を上げる広海君。

「ねえミライさん、一緒に見て回らない?」

ってニヤけてる。

ムムッ、何か企んでないか?

「でも、教室展示でここに居ないといけないんでしょう?」

ミライが言い返してる。

確かに各学科とも研究内容を教室展示する事になってる。

と、広海君が澄まして返してきた。

「大丈夫よ、ドッと見に来る事なんてないんだから。先生一人置いとけばいいわよ」

オイオイ…。

「あ、来たみたい」

ミライの声の後、ハイヒールの靴音が扉の前で止まった。

コンコンとノックの音の後、扉がガチャッと開く。

覗いた顔は、クワン。

「クワンじゃないか!」

「こんにちはー。入ってもいいかしら」

扉に手を掛けたまま、ニッコリと微笑んで返してきてる。

「どうぞどうぞ」

さあさあ中へ入ってよ。

「失礼しまーす」

声を上げたクワンに続いてロイが姿を現す。

…ん、後に続く姿がないけど?

「あれっ、二人だけ?」

「そうなの。私たち二人だけ」

えっ、どうして?

「所長は?」

来るって言ってたけど?