クッキーをいれていたことに気がついたのは、

学校にいってから、スクールバックを机に勢いよく下ろしたときだった。

パキッという音と共に、教室に甘い香りが広がった。

失敗なんてほとんどしないから、皆が興味をもった眼でみてくる。

恐る恐るスクールバックに入っていた教科書をどかすと、

案の定クッキーは、割れていて

紙袋も教科書の重みに耐えきれなかったのか破れている。

頑張って作った苦労がフラッシュバックしてきて、

鼻の奥がつんとした。

「皆、おっはよー!あれ?この匂いは...」

眼をつぶって鼻だけを頼りに、私のもとまでたどり着いた。

犬なの?ってつっこみたくなるほどの、嗅覚だ。

「淳...。朝からテンション高いね」

「俺、そういうやつだもん。あと、これ貰うねー」

「えっ、ちょっと...!」

見るも無惨なほど割れまくっているクッキーを、

美味しそうに頬張る。

「食べ物は、1つだって無駄にしちゃいけないよ。

さすがに床に落ちたのは、ダメだけど

バックのなかだし、ギリギリ紙袋の中にはいっていたから、だいじょーぶ!

味は、かわらず美味しいよ」

「あっ...ありがとう...」

淳がそんなことを考えて食べていたなんて、

考えてもいなかった。

確かにまだ食べれる状態の物は、いくつかあったはずなのに、

もうダメだって決めつけてた。

それじゃいけないよね。