この頃結衣は、会う度に楽しそうに仕事の話をしてくれる。
先輩にランチを奢ってもらったとか、営業の人に髪型を褒められたとか…
それだけではない。
最近通い始めた料理教室で習った料理を俺に振舞ってくれたり…
いけた花をプレゼントしてくれたり…
俺自身も、結衣が仕事に趣味に楽しく過ごせていることはもちろん嬉しい。
だけど同時にそれが、俺が指輪を渡せない理由にもなってもいた。
楽しそうに笑う結衣を愛おしく感じるのと同時に、募る不安。
結衣にとっての幸せは、本当に俺と結婚することなんだろうか。
彼女自身も、今の生活が幸せだと思っているのではないだろうか。
俺と結婚すれば彼女は一生〝極道の女〟として生きていくことになる。
そうすれば今のように普通に働くことも、趣味に時間を費やすこともできないかもしれない。
それだけじゃない。
月島組若頭の妻と言う地位に立つことで、危険な目に合わせる可能性だってある。



